2009年08月03日

カタチ・・・


この物語は架空の世界のお話です。


今。僕たちの居る世界は。地の果てにあって。
それは凄く深く光もとどかないくらいつめたい場所にあって
未来もなく。ただ一方的に人は蹂躙されるだけの日々を送っていた。

僕たちはそんな地下深くで生まれて
奴隷として魔にひれ伏して生きる事が
当たり前の日常で疑う事さえゆるされなかった。
自由はどこにもなかったんだ。

黒土アキラ。それが僕の名前。
そしてそんな僕の友達が双子の
翡翠ヨーコと翡翠ツバサだった。

ヨーコはとても活発的な女の子で
どんな逆境においても笑顔をたやさない子
ツバサはいつもニコニコ笑っていて
心の感情を閉じ込める事が度々あったかな。

僕たちが地の果てに生まれて。
16年の歳月が流れた。

僕たちの見ていた当たり前の世界は
魔と呼ばれる人と人ではない古代の人との
間に生まれた圧倒的すぎる存在によって
一方的に統括されている世界だった。

だけど。僕たちは奴隷である前に
この世界がどうなっているのかを
知ることさえ許されない存在だった。
あの日を迎えなければ。。

ある日。ツバサは魔と表される者達に
一方的に苛められていて。
遊びと言う名目で。見知った人族の
女の子を的にして。針のような鋭いものを
投げあい。誰が一番にその女の子の悲鳴を
あげさせるかと言う。行為をゲーム感覚で行う。

一方的に支配され。学校とは呼べない学校の中で
そういう表立った遊びという名目のいじめは
後をたたなかったんだ。

特に僕達。人族の末裔は苛めの道具として
しばしば用いられる事があった。

鋭い針が。女の子の腕や足に命中する度に
その子はぐっと唇をかみしめて
悲鳴を上げないようにしていた。

僕はそれを2階の窓から見ていたんだ。
そして見るに耐えた時。僕の遠投で
彼女は意識を断つ事になる。

距離にして200、300メートルはあろうかと言う
距離を超え的確に彼女の意識のみを断つ。
そして。何も見なかった事にして
2階の窓を閉じる。

僕のような異能者は他にも居た。
人は昔。英知を持っていて
さまざまな力や知恵や創造力に特化していた
そんな一族なのだと聞く。

でもそれはもう何千年も昔の話で。
僕達の祖先は黒い髪をしていたと聞くけれど。
今の僕達。人族の末裔は銀髪をしている。

異能を持っているのは翡翠ヨーコやツバサも同じだった。
でも。魔を圧倒するその力を表立って使えば。
たちまち苛めの標的にされるし。
なにより。人族最大の禁忌とされていた。
人族が昔。環境汚染によって住めなくなった
地表を捨てて。地中に逃げ場を求めた時
そこに古くから住んでいた魔の者達は歓迎しなかったと聞く。
戦争に負けた人族はそれからずっと何千年もの間
魔の奴隷として家畜として生きる事を当たり前と
思うようになる。

ある日。ツバサが魔に目をつけられ。
多くの魔の集団と共に。校庭に出たと聞く。
姉であるヨーコは急ぎかけつけるが。
そこで見た光景。。。

それは10数名以上の魔の生き絶えた後の姿だった。
僕が駆けつけた時。ツバサの拳は黒く変色しており
いつものやさしいツバサではなく。別の何か大きな
力が作用しているように思えた。

ヨーコはひた隠しにするけれど。
ヨーコには人族に対して癒しの治療が出来る
異能者であり。ツバサは。。なんだろう。。。

武器や凶器などで切りつけた形跡はなく
息絶えている魔はすべて打撲によるショック死だった。
事は大きくなり。

人族が魔に抗うと言う禁忌をおかしたと言う事で
人族の集落から。ツバサ追放の命が下る。
人族の末裔として禁忌を犯した銀髪の少年ツバサは
この日を境に。ヨーコと共にその消息を絶つ。

ツバサとヨーコが共に追放の道を歩んだ時から
数日かかってあるうわさが飛び交うようになった。
それは。ツバサとヨーコがあると決まっているわけではないのに
自分達の住める世界。奴隷ではなく。人として
生きられる。はるか彼方に失った過去の世界を目指して
地表を目指していると聞く。

その頃。僕達人族は。ツバサの行動により
魔の圧制をより強く感じる事になっていたんだ。
クラスの中から一人。また一人と人族が消えてゆく。
そして息絶えた姿で発見され。見知った者達だけで
ひそかに埋葬を許されていると言う事実。

僕はツバサの過ちは正しかったのではないかと
今でも思っていて。これが後に僕におそいかかる
魔の脅威となる。

僕の異能者としての才能は正確性。
これはかなり重要な事で。人族は弱小であったが故に
さまざまな異能を持って生きていたと聞く。
中には見た事もない幻想の世界を描ける異能者や
未来を見る事の出来る異能者も居たと聞く。

僕は魔の怒りを買い。遊びの標的として
今鋭い針を向けられている。
両手を縛られた状態で。数メートル先に
魔の者達が遊びや儀式と表して僕に向けて
鋭い針のようなものを無数に投げつけてくる。
痛みに耐え。ぐっと我慢するしかないこの遊びは
誰かが助けてくれるまで永遠と続く。。。

だから僕は僕の異能者としての特性である
正確性で同じ目にあっている人族の仲間の意識を
度々絶つと言う方法で救い続けてきたけれど
こんかいばかりは。誰も助けてくれそうにない。

僕の名前は黒土アキラ。覚えてくれている人はいない。
どうしてかって?それは友達の名前を覚えていても
人族はいつ殺されるかわからないから。
悲しむ心を授かっている人族には苦しいだけの
経験なんだ。だから皆名前はあるけど
よほど親しくならない限りは相容れないように
している。

僕の名前を知っているのはツバサとヨーコだけ。
そして今。ツバサとヨーコは一族を追放され。
行方知れずとなっている。

僕の意識が戻った頃。あたり一面に
黒い血が流れていて。苛めていたはずの
魔の者達が息絶えていた。
そのどれもが的確に相手の致命傷となる部分を
貫くと言う。症状だったことに
自らの目を疑う。。。

苦痛のあまりか。恐怖のあまりか。
絶望のあまりか。僕は魔の者達に逆らったらしい。
こうして異能者。黒土アキラは人族を追放された。

行くあてもなかった僕が最初に思い出した事。
それが噂で囁かれていたツバサとヨーコが地表を目指している
と言う事だった。

もし今も生きているのなら。
僕も地表を目指せば会えるかもしれない。
そんな漠然とした夢を見る事で
圧倒的な絶望から逃れようとしていたんだ。

人と魔の者が作った建設物が見えなくなり
岩肌がむき出しの狭い洞窟や時折広くなる洞窟を
ただ一人で歩き続けていくと。集落のような者があった。
ここは過去に追放された異能者達が生きる為に
集まって作った集落なのだけれど。

数ヶ月前。数名の魔の者が訪れてから
自体は一変したらしい。
今では。魔の者が開催するゲームに勝った者だけが
生きる自由を得る事が出来る。

僕はそんな集落の事情を知らずに
うかつにもその集落に足を踏み入れてしまう。
そこで。ツバサとヨーコの姿を見た。
生きていた。。とはいいがたい光景。。。

魔の者が率いている大きな魔物。
それが彼らの特徴であり。人族との戦争時に
勝利をもたらした禁忌の生物であると知る。

毎晩行われる魔による一方的な宴の席で
ゲームとして。魔物1匹と人族6名が
試合を行う事になるんだけど。
これが試合とはいえない一方的な内容で。

ツバサの黒く変色した豪腕もこの魔物には
通用しなかった。理由はブヨブヨとした
肉厚の体にあるらしい。
ダメージを受けない。その代わりに人を食らう。
これが宴の席のゲームとして毎晩行われているのだから
その宴の席で毎晩選出されては生き残っているツバサと
ヨーコの場数ははかり知れない。

ツバサとヨーコが村を追放されて焼く7つき。
僕はその間も魔に怯えながら心のどこかで
一人ぼっちではないツバサやヨーコがうらやましかった。

僕が集落に到着したその晩。宴がいつものように行われ。
7つきもの間毎晩戦い続けたツバサの力量と場数の違いを
この肌でぴりぴりと感じる事になる。
守るべき人が居るから強くならなくてはならない。
僕達の居た集落は秩序が多少なりあって。
魔物を使う事は魔の者として禁忌とされていた。
しかし。ここに居る者達は違う。

お互い禁忌とされる定めを破った異能者達。
魔の者も異能者。人族も異能者。
僕はこの晩はじめて。人と魔との語り継がれた
戦いの歴史をこの目におさめる。

ツバサが声を出した瞬間。
魔物が悲鳴をあげ。高い声でなきがじめた。
それは頭が割れるような高い声で。
人族のほかの異能者達も追い討ちをかけるようにするが。
ツバサは勝つ気はなく。ただヨーコをかばうようにして
戦っているのは明らかだった。

力のツバサ。癒しのヨーコ。そこに正確性を持った僕。
何が出来るでもなく処刑までのカウントダウンははじまる。

1つきが経過した頃。この集落での生き残る為の戦いにも
なれて来た頃。人族の一部の者に異変が訪れている事に気付く。
それが色濃く出ていたのがヨーコだった。

銀髪が当たり前だった僕達人族の髪が
黒くその色を変色させていた。
魔物は明らかにヨーコを食べたくてしかたがないのだけれど
銀髪の翡翠ツバサが邪魔をする。。。
苛立つ魔物は大きく体を地面にたたきつける事で
洞窟内の落石を招く。その事態に震えて動けなくなる僕とは別に
地に足を付けて黒く変色した右腕で魔物をにらみつける
ツバサの姿があった。

僕がはじめて自分の異能さに気付いたのは
この時だったかも知れない。
魔物は知能が低く。感情がたかぶりやすいらしく。
暴れた後。自分がどうなるかまではわかってなかった。
僕は。その事にいち早く気付き。
得意の正確性で。魔物に追放された人族初となる
致命傷を与える唯一の脅威として魔の者に認識される
夜となった。

宴も終わり。眠りにつこうかという頃。
ツバサが部屋に訪れて。一言言う。

「ヨーコを守る為に俺と戦わないか?」と。。

無論僕にはなんのメリットもない。
ただ。人族の集落の中で生活していた頃。
僕は何度も魔の者に襲われ意識を失い。
その度に目覚めるとヨーコが居た。

それは彼女の持つ癒しの力を使っていたからなのだろう。
ためらう事なく。恐れる気持ちより先にツバサの手を
掴み立ち上がって言う。

「僕でよければ」と。。。

捨てられた命だ。誰かの為に散れるなら
そこに価値が生まれるのではないかという。
もっとも人らしい感情で未来に希望と言う名の
お仕着せをしていたのかもしれない。
結果はどうあれ。
8つき目から僕達の反撃が始まる。

いつものように魔の者が自慢の魔物を出す。
それは今までに何度もみたブヨブヨとした体の
肉厚の魔物だった。

これに先制攻撃を仕掛けたのが僕だった。
といっても近くにある。少しとがった石を
魔物の中枢に投げ込んだだけなのだけれど
シンプルな攻撃ほど。有効な場合がある。
僕の場合。近接戦は不得意なので
いつも遠距離からものを投げるしかない。
ただ。筋力が異能者の中でも特化していたためか
投げられたものの速度は軽く100キロを超える。
そのうえ重量のあるものも軽々と投げる事が出来るという
なんとも反則じみた攻撃能力で。これがまた
地味に痛い。

ツバサのような花のある攻撃は出来ない僕にとって
これは支援のつもりだったのだけれど。
魔物が苦しみに耐えかねて息を引き取った時。
酒を酌み交わしていた魔の者が席を立ち
言葉を失っていた。。。

崩れ落ちたブヨブヨとした魔物の死骸を前に
今まで圧倒的に有利な条件だった魔の者が
言葉を失うさまは初めて味わう勝利への期待だった。

魔物のえさとなるはずの人族が一人。また一人と
ゆっくり。確実に魔の者のそばへと歩み寄る。
その末路を見れないままツバサは僕の手をひき
自由の権利を得て村を出て地表を目指す旅が始まる。

地表に近くなればなるほど。野放しの魔物も多く。
また。魔の者だけで結成された集落などもあったが
気付かれないように時に息を潜めて逃れ逃れて
いきついたのが閻魔と言う番人の居る大広間だった。

この向こう側に人族が何千年も昔に栄えていた世界がある。
閻魔は他の魔のものとは違って。
好戦的ではなかったが。問いに答えない場合。
また。偽った場合。圧倒的な破壊力で攻撃を仕掛けてくる
実に厄介な番人であり。いまだかつてこの番人の向こう側に
ゆけた者はいないのだと言う。

かつて。僕と同じ黒土の者が村を捨て。
この地に訪れ。閻魔と合間見えて敗北した事を
閻魔本人からきかされる。

「黒土アキラ。お前は黒土シグネの子孫か?」と。。。

黒土シグネとは。黒土家の中でも
最も武に優れた者で。若い頃から
魔の者の支配を受けなかったほど。
異能の才にたけた黒土一族最強の人物である。
といっても何千年も前の伝承でしか聞かされてないんだけどね。

そんな人物と僕がよく似ていると言う。
特にその黒髪とか。。。そう閻魔に言われて
はじめて自分の髪が黒髪に染まっている事を知った。
光の届かない世界では。自分で自分の姿を見る事は
禁忌とされており。幼い頃からそれが当たり前だったから
自分の姿を知らない者が多い。
現にヨーコのように黒髪になっている者を見て
黒髪になっているぞ!と言われれば分かるのだけれど。

ヨーコもツバサも気を使ったのかな。
僕にはその事を伝えずにここまできた。
いらぬ心配をかける必要がない。

いくせんもの魔物達と戦うたびに人族は
本来の姿を取り戻していくのだと聞いた事はある。
しかし。一番多く戦っているはずのツバサは
いまだ銀髪のままだった。

閻魔の問いは永遠と続き。
時に人中を越えた質問に回答出来ず。
攻撃を受ける事もしばしばあったが
僕達も黙ってその問答に付き合うつもりはなく。
幾度もあらがうが。閻魔の圧倒的な力の前に
なすすべがなかった。。。

ツバサが大きな傷を負い。虫の息であっても
問答は続いた。まさにこの問答をはずすと
ツバサの命はなくなると。そういうところまで
追い込まれてヨーコは必死に治癒能力を使おうとするが。
疲れ果てた僕達に。もうそれだけの力はなく。
僕自身も握力がなくなるほど。
長い戦いをしていたように記憶している。

それがたった1つきの出来事。。。
永遠とも思える問答の中で。
傷付いたツバサを背に最後の問答がはじまる。

事実上この問いをはずせば。僕とツバサとヨーコは
ここで命を落とす事になる。
そして閻魔は問う。

「自由とは何か。また。それらを肯定した場合」
「求める強欲の先にあるものは何かと自由という矛盾か」
「未来という幻想か。。はたまたそれ以外の何かか。。」

僕には分からなかった。自由をつかの間でも得た僕達には
さまざまな集落の規律に従い生きてきた僕達には
困惑を極める問いだった。

そして答えが見つからないと分かった時。
僕達の旅が終わる。。。

???「生きたいと思うささやかな幸福。」
   「それを強欲と認め生きる器。」
   「それらを得る為の自由。」
   「それらを得る為に生じる矛盾。」
   「この問いに答えなど無い。。。」
   「愚問の道理を用いてまで通さぬとは」
   「見下げ果てたな閻魔!」

僕の口から勝手に言葉が出てくる。
意識が遠くなるのが分かる。
僕の名前は。。。黒土。。シグネ。。。
時を超えた今。覚醒遺伝として。
再び黒土シグネが閻魔の前に立つ。

シグネ:「閻魔よ。久しいな。」

その一言に数え切れないだけの重みがあり。
僕の中の僕がゆっくりと消えようとしていた。
シグネの意識に飲み込まれて消えそうなった時。
閻魔のくれた自由が。シグネの導きだした答えが。
僕達の未来を作り上げる。

そして薄れ行く意識の中で黒土シグネ。。。
僕達の血族のはるか彼方の英雄が語りかけ。
傷付き朽ち果てそうになっているか弱い僕の手をとり
こういい残す。

「自由の為に。生きよと。。。」

どんな矛盾があっても肯定する勇気。
それがあれば未来は思う方向に傾く。

閻魔の問答に打ち勝った黒土シグネは
ゆっくりと安堵の眠りにつき
僕の意識がゆっくりと戻ってくる。
僕の名前は。。。黒土アキラ。
そうアキラだ。

傷付いた翡翠ツバサを背負い
ヨーコと共に地表に出た時。
まぶしい光に包まれて一瞬。
周囲の光景が真っ白く見えた。

そして。光の下ではじめて分かった事実もあったんだ。
翡翠ツバサの髪の毛の色は銀髪だったわけではなく
真っ赤に燃える赤い赤毛だった。
黒く変色してなおも戦う事をやめなかったが故か
かばうものの重さゆえか。赤毛になった翡翠ツバサは
意識を取り戻す事はなく。外世界を見る事もなく。
ゆっくりと僕の背中で息をひきとった。

守るべき者を守る為だけに戦い続けた戦士の最後を
ヨーコと見届けて。僕達の自由への旅がまだまだ続く。。
未来の見えない。無限の恐怖と戦い続けた
ツバサのぶんまで生きると近い。墓標を見晴らしのよい
丘の上に立てる。

走馬灯のようにフラッシュバックする翡翠ツバサとの記憶。
彼の笑顔が今も脳裏に残りながら。
一番悲しいのは翡翠ヨーコであるが。
彼女はツバサのぶんも強く生きると決意し。
僕達の髪が赤く染まるまで生きる事を
ここに誓う。。。


記載。小夜子。

お粗末さまでした。 ><ノ


カタチ・・・


そのハート射抜いちゃうぞ!
カタチ・・・




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Posted by バズちゃん at 08:56 │私の見た夢の世界